第37話「テキサスの攻防」 |
脚本・山本優 絵コンテ・斧谷稔 演出・貞光紳也 作画監督・中村一夫 |
ナレーター | 「ソロモンの攻略戦が終わった。ドズル中将旗下の宇宙攻撃軍は事実上壊滅した。ジオン公国にとっては予想だにしなかった敗北であった。デギン・ザビ公王は、ドズルにしてもっともな事であるよ、とギレンに答えたという。ギレンはその公王に怒りを覚えつつも、綺羅星のごとく居並ぶ高官達の前で叫んだ。ア・バオア・クーを最終防衛線として連邦を撃つ、と」 |
アイキャッチ | 「テキサスの攻防」 |
マーカー | 「第二戦闘ライン内異常なし、敵艦なし、機雷なし、と。結構なことですよ、あと30分で交代ですからね」 |
フラウ | 「アムロが来ました」 |
サンマロ | 「血圧測っといてくれ」 |
フラウ | 「はい」 |
サンマロ | 「オスカ、マーカー、アムロ、みんなよく持つな。あー」 |
アムロ | 「フラウ・ボゥもいろんな事やらされて大変だね」 |
フラウ | 「アムロに比べたら楽なものよ」 |
アムロ | 「いつからだっけ?」 |
フラウ | 「何が?」 |
アムロ | 「僕ら、話しなくなって」 |
フラウ | 「そうね、無我夢中だったからね」 |
アムロ | 「うん」 |
フラウ | 「コンピュータの内診は異常なしよ」 |
「アムロって恐いくらいたくましくなったのね」 | |
アムロ | 「え?」 |
フラウ | 「あたしなんかには届かなくなっちゃったのね」 |
「でもいいのよ。弱虫のアムロなんて見たくもないし、みんなこうして大人になっていくんでしょ?」 | |
アムロ | 「ご、ごめん。フラウ・ボゥ、なにも僕」 |
フラウ | 「いいんだってば。でも、サイド6で何かあったの?アムロ、変わったみたい」 |
アムロ | 「そ、そうかい?べ、別に。…いつか話せるようになったら話すよ。いろんなことがあったんだ」 |
フラウ | 「そう」 |
サンマロ | 「どう?」 |
フラウ | 「…異常ありません」 |
アムロ | 「ハヤトの具合どうですか?」 |
サンマロ | 「順調だよ、運動やってたおかげだな」 |
マーカー | 「まいったな、テキサスの暗礁空域だ」 |
ブライト | 「総員起こしするか」 |
マーカー | 「あ、起こしてすいません」 |
ブライト | 「いや」 |
マーカー | 「第三戦闘ラインすれすれにいるのはチベですが、テキサスゾーンにもいるようですね」 |
ナレーター | 「ソロモンを抜け出した敵艦の掃討作戦に就くホワイトベースはテキサスゾーンに入った。暗礁空域である。レジャーと牧畜業を専門に造られたこのコロニーはテキサスと名付けられ、軍事的にはなんの重要性も持たぬ為に取り残されている。それを囲むように岩とコロニーの残骸が浮かぶ」 |
シャア | 「まだテキサスには着いておらんのか?エルメスとビットは」 |
マリガン | 「整備が遅れているようです」 |
シャア | 「まあいい、私のゲルググが届いているだけでもな。テキサスには人はいるのか?」 |
マリガン | 「さあ、昔の従業員とコロニーの管理省の役人がわずかにいるようですが」 |
シャア | 「無人コロニーみたいなものか」 |
マリガン | 「はい」 |
「木馬はどうします?」 | |
シャア | 「近くにマ・クベがいるだろ?」 |
マリガン | 「はい」 |
シャア | 「こちらは手持ちの武器がないのだ、奴にやらせろ。ザンジバルはテキサスに入港する」 |
マーカー | 「チベが動きます、見つかったらしいです」 |
ブライト | 「よーし、総員起こしだ」 |
ブライト | 「敵接近、敵接近、全員第三戦闘配置」 |
セイラ | 「…命拾いのあとのいいお風呂だったのに」 |
ブライト | 「ソロモンから脱出した敵と思われる。第二戦闘エリアに入ったらガンキャノンも発進する。各員、ソロモンのあととはいえ気を抜くなよ」 |
「ミライ、いいのか?」 | |
ミライ | 「心配かけてごめんなさい。少し働いて疲れたいわ」 |
ブライト | 「無理はするな。俺でよかったら聞き役ぐらいはさせてくれ」 |
ミライ | 「…ありがとう。助かるわ、そう言ってくれると」 |
マ | 「フフ、予定通りだな。木馬をキャッチできたか」 |
「ウラガン、私のギャンの整備はどうかな?」 | |
ウラガン | 「はい、いつでも」 |
マ | 「ようし、エリア2まで進んでリック・ドム発進、私もギャンで出動する」 |
ウラガン | 「しかし、マ・クベ大佐みずからお出になることはないと」 |
マ | 「あるのだな」 |
ウラガン | 「は?」 |
マ | 「ギャンは私用に開発していただいたモビルスーツだ。キシリア少将へ男としての面子がある。それにシャアには例のモビルスーツが届いていないという話だ。きゃつの前で木馬とガンダムを仕留めてみせるよ」 |
アムロ | 「セイラさん、チベが第二戦闘エリアにキャッチできるはずです。気を付けてください」 |
セイラ | 「了解」 |
ジオン兵A | 「ポイント3AAに木馬キャッチ。各員戦闘配置に就け。リック・ドムは敵戦闘爆撃機に対して先制攻撃を掛ける」 |
マ | 「ガンダムが現れたらテキサスへ誘いこめ。このギャンにはその方がやりやすい」 |
ジオン兵A | 「は、心得ております」 |
マ | 「よーし、ゆけ」 |
アムロ | 「来たな」 |
「セイラさん、チベです。そろそろ見えますよ」 | |
セイラ | 「了解」 |
ブライト | 「マーカー、どうなんだ?敵の動きは」 |
マーカー | 「ますます岩が多くて」 |
ブライト | 「正面、最大望遠だ」 |
「Gアーマーを狙っているのか?」 |
マ | 「ウラガン、木馬の足を止めるのは任せたぞ。相手は一隻だが油断はするなよ」 |
ウラガン | 「了解であります。出撃なさってください」 |
マ | 「作戦通りやれ。テキサス近くで私は仕掛けを作る。ガンダムを倒せば二階級特進ものだということを忘れるな」 |
セイラ | 「来るわ、アムロ」 |
「見えて?アムロ。モビルスーツ四、五機かしら?」 | |
アムロ | 「ミノフスキー粒子と岩のおかげで判別つきませんね」 |
セイラ | 「見えたわ」 |
「アムロ、狙えて?」 | |
アムロ | 「やってみます…」 |
「ボルトアウト、急ぎます」 | |
セイラ | 「了解」 |
アムロ | 「来るな」 |
「うわーっ」 | |
「どこだ?」 | |
セイラ | 「ドム」 |
マーカー | 「ガンダム、Gファイター、テキサスへ流されているようです」 |
ブライト | 「カイ、発進スタンバイ。各員、第一戦闘配置」 |
ハヤト | 「サンマロ軍曹、また戦いが始まってんですか?」 |
サンマロ | 「ハヤトは体を治すことだけを考えるんだ。それも任務だぞ」 |
ハヤト | 「それはわかりますが、僕の傷は思ったほどひどくないんですよ」 |
サンマロ | 「あと一日二日したら起きられるんだから今はこらえるんだ」 |
ハヤト | 「格好良くいかんもんですね」 |
サンマロ | 「病人の格好っていうのだってあるのさ。手間をかけさせるなよ」 |
シャア | 「ミラーの調節も利かないコロニーはひどいものだな、カラカラだ。フラナガン、どうだ?」 |
フラナガン | 「順調です。ララァはテストターゲットを70パーセントの確率で当てました」 |
シャア | 「うむ、ザンジバルに戻るか」 |
ナレーター | 「牧畜とレジャーの為のこのテキサスも、戦争の余波でミラーが動かなくなり八ヶ月あまり夕暮れのままである。その為砂漠化が進み、人も住まない」 |
ララァ | 「なにかしら?来るわ」 |
シャア | 「来る?何がだ?」 |
ララァ | 「なにかしら、なにかしら、これ?何かが来るわ」 |
シャア | 「フラナガン、なんだ?」 |
フラナガン | 「テストターゲットではありません。今までこんな脳波の共振を示したことはありません」 |
ララァ | 「あたしと同じ人がいるのかしら?」 |
シャア | 「ララァ、今なんと言った?」 |
ララァ | 「フフフ、大佐があたしの心を触った感じなんです」 |
シャア | 「私が?ララァ、冗談はやめにしてくれないか」 |
ララァ | 「はい」 |
『なんだったんだろう?今の、あの痺れるような感覚は?』 |
アムロ | 「手馴れたパイロット達だ! だが、パターンは読んだ!!」 |
マーカー | 「ガンダムとGファイターはテキサスエリアに入りました」 |
ブライト | 「右舷の艦隊の動きはどうなんだ?」 |
マーカー | 「変化ありません。ゆっくり移動しているようです」 |
セイラ | 「チッ」 |
アムロ | 「最後の一機」 |
「なに?」 | |
「こいつの所へ誘い込む為の作戦だったのか」 | |
マ | 「さて、来てもらおうか、ガンダム」 |
アイキャッチ |
アムロ | 「こいつ、小賢しいと思う」 |
マ | 「ははは、や、やった」 |
「フフ、戦いをまともにやろうとするからこういう目に遭うのだよ、ガンダム」 | |
「おおっ」 | |
アムロ | 「ん?テキサスに逃げるのか?」 |
シャア | 「何を見ているのだ?」 |
ララァ | 「大佐を。いけませんか?」 |
シャア | 「構わんよ」 |
ララァ | 「あたしにエルメスを操縦できるのでしょうか?」 |
シャア | 「恐いのか?」 |
ララァ | 「はい」 |
シャア | 「それは慣れるしかないな。私がいつもついていてあげる。そうしたらララァはすぐに私以上のパイロットになれる」 |
ララァ | 「私が?赤い彗星以上に?」 |
シャア | 「当たり前だ。そうでなければ、みなしごだったララァをフラナガン機関に預けたりはしない。サイド6ではさびしい思いをさせてすまなかったな」 |
ララァ | 「…」 |
マリガン | 「大佐、マ・クベ大佐がモビルスーツでテキサスに潜入したそうです」 |
シャア | 「マ・クベがか?物好きな。マ・クベにそんなとこがあったとはな」 |
マリガン | 「ご自分用のモビルスーツを開発させて、打倒木馬と常日頃おっしゃっておられたようですから、自信があるのでしょう」 |
シャア | 「私へのあてつけだよ。そうでなければ彼がそんな軽率なことをする訳がない。しかし、黙って見ている訳にもいかんな」 |
マリガン | 「ゲルググの装備は終わっています。プロトタイプですので完全とはいえませんが」 |
シャア | 「なら、テストを兼ねてマ・クベの様子を見るか」 |
セイラ | 「まだ」 |
「やった」 | |
「敵艦だわ」 |
ブライト | 「フラウ・ボゥ、ガンキャノンを発進させろ」 |
フラウ | 「はい」 |
ブライト | 「マーカー、敵艦は?」 |
マーカー | 「チベ1、ムサイ2」 |
アムロ | 「…」 |
ララァ | 「…なにかしら?」 |
シャア | 「わかっている。ゲルググのデーターは頭に入れてある」 |
マリガン | 「ノーマルスーツを着てはいただけませんか?」 |
シャア | 「私はモビルスーツに乗っても必ず帰ってくる主義だ。死にたくない一心でな。だから戦闘服だのノーマルスーツなどは着ないのだよ」 |
「上げてくれ」 | |
マリガン | 「はい」 |
ララァ | 「…?」 |
アムロ | 「ん?」 |
「…違うな」 | |
「うわーっ」 | |
「…こ、こんな小型爆弾で」 |
ララァ | 「大佐」 |
シャア | 「ララァ、安全な場所からよく見ておけ。モビルスーツ同士の戦いというものを」 |
ララァ | 「はい」 |
シャア | 「さて、マ・クベのお手並みを見せてもらおうか」 |
ミライ | 「3、2、1、どうぞ」 |
ウラガン | 「うっ、バ、バロメルが」 |
「こっちも岩を盾にするんだ」 |
シャア | 「あれか?」 |
マ | 「カンがいいのか?それともあの新しいタイプの奴なのか?」 |
「ん、味方のモビルスーツか?」 | |
アムロ | 「やるな」 |
「赤いモビルスーツ?」 | |
「シャアなのか?」 | |
マ | 「シャアーッ、退けい」 |
「今の貴様の任務はガンダムを倒すことではないはずだ」 | |
シャア | 「味方が苦戦しているのを見逃す訳にはいかんのでな」 |
マ | 「私なりの戦い方があるからこそガンダムを引き込んだのだ」 |
シャア | 「任せたよ、マ・クベ大佐。来るぞ」 |
アムロ | 「…」 |
マ | 「フフ、今までのデーターで確かめてある。シャアとの小競り合いでビームを使いすぎたのだよ」 |
カイ | 「こいつ」 |
「うおーっ」 |
シャア | 「ガンダムがかたをつけてくれればありがたいとも思ったが、マ・クベめ、よくやる」 |
「ララァ、見ているな?」 | |
ララァ | 「大佐はなぜ助けてあげないのかしら?なぜ?…こ、これだわ、さっきからの感じ」 |
アムロ | 「もう剣を引け」 |
「汚い手しか使えないお前はもうパワー負けしている」 | |
マ | 「シャアを図に乗らせない為にはガンダムを倒さねばならんのだよ」 |
「なんと」 | |
「おおっ」 | |
ララァ | 「ああっ」 |
『もうおやめなさい、終わったのよ』 | |
アムロ | 「え?なに?」 |
マ | 「…おお、ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ、あれはいい物だ」 |
シャア | 「それ見たことか。付け焼刃に何ができるというか」 |
ララァ | 「…大佐」 |
アムロ | 「誰だ?誰かが僕を見ている」 |
「これは?シャアじゃない」 | |
ララァ | 「こ、これは?ア、ム、ロ?」 |
アムロ | 「ラ、ラ?」 |
次回予告 | 「すでに新たな力を手に入れつつあるアムロにとって、シャアは敵ではなかった。その戦いのさなか、セイラはシャアに詰問をする。ジオンを捨てよ、我が胸に帰れ、と。機動戦士ガンダム、次回、『再会、シャアとセイラ』。君は、生き延びることができるか?」 |